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アルミ(ジュラルミン)製ホイールナットの是非

わずかでも軽量化したい人やドレスアップ目的の人に人気のジュラルミン製ホイールナット。重要な部分にアルミ製のナットを使用するのは危険とされる意見も多く聞きます。その是非はいかに。

ホイールナットの役割

ホイールナットは、ホイールを車に留めているナットです。タイヤ交換はもちろん、足回りの様々なメンテナンスで取り外す必要のあるホイールは着脱できるようボルト&ナットで締結されています。しかし、もし走行中に車輪が脱落したら大きな事故に直結します。それだけに、仕様には気を使ってあげても悪くない部分です。

アルミと鉄

足回りというのは重量にデリケートな部分です。一般に車体を1キロ軽くするよりも、足回りを1キロ軽くしたほうが効果は高いとされています。それだけに、足回りの部品は少しでも軽くしたくなるもの。そこでホイールナットをアルミ製にしてしまおうというわけです。

ところが、アルミは鉄と比べて弱い素材です。鉄の製品をアルミにしたら軽くなったと良く言いますが、それは形状や構造を設計しなおしているからです。全く同じ形ならば鉄のほうが強いのです。しかしナットはボルトという相手が居ます。相手に合わせた形にしかならないので、形状でフォローするには限界があります。

アルミのデメリット


銀色がアルミ製。長期の使用により座金や工具との接触部に“かじり”が見られる。

上で述べたように、アルミ製の不安要素はまずその強度です。これは一般に、アルミ製と言っても7000番台の超々ジュラルミンと言われる最高強度のものがよく使用されます。強度としては、7000番台ならばネジとしての強度も満たしているかもしれない。という程度です。

次に、膨張率です。特に金属は温度によってその体積が大きく変化します。熱くなると一般に大きくなりますが、穴の場合はその穴も大きくなります。これがボルト&ナットの場合、同じ材質ならば同じように大きくなるだけなので良いのですが、鉄とアルミの場合は鉄のボルトはそこまで太くならないのに、アルミのナットは穴が大きくなってしまい、緩みやすくなる。ということが考えられます。
特に車で1、2を争う高熱を発するブレーキが近くにあり、まさにそれが最も熱を持つであろうサーキット走行でこそ、この熱膨張率の問題が顕著に現れます。

鉄のデメリット

鉄のデメリットはその重量です。といっても、部品自体が小さく重さと言っても大したものではありません。実際に、ナットをアルミにしたからタイムが上がったなんてことは我々サンデーレーサーレベルではありえないと思って構いません。


ボルトが破断するとナットが外れず、ホイールも外せない。


破断したボルトが食い込んだナット。
太い部分が起点になっているのが分かる。

しかしもうひとつ意外なトラブルが起こります。ボルトの破断です。図のように、社外品のナットは先端がテーパー形状、後端は細くなっています。特に鉄ナットは軽量化のためにアルミ製のナットより細くなっており、太い部分との差が大きくなりがちです。

鉄の場合、特に社外品のものはSCM45というかなり強度の高い鉄を使用していることが多く、破断するときはボルトで起きます。すると、図のようにナットが外れなくなってしまいます。

ナットがアルミの場合は強度のないアルミ側、つまりナットが破断します。ナットが破断した場合はそのまま抜けることが多く、そうでない場合も無理やり回していくとナットのねじ山が全てねじ切れ、スッポ抜けます。

ボルトとナットのどちらでトラブルが起きたとしても、両方交換です。そしてそのためにはホイールを外す必要があります。そこまで難しい作業ではないため、たとえ破断しようともナットが外れてさえいれば修理可能です。しかしナットが外れない場合、ナットを破壊しなければなりません。ところがそのナットがとても固い鉄だったとしたら、相当手こずる事になるでしょう。

ところが現実は逆

鉄ナットがボルトを破壊するリスクは、車両のメンテナンスや改造を頻繁に行う人にとっては脅威です。出来る限り避けたい出来事です。しかし、安全面では全く逆なのです。

ナットが破断した場合、ナットが外れホイールも外れます。それが走行中に起きたら大惨事です。
自動車以外でも突然外れたら危険な部品はたくさんあります。そのためボルト&ナットでは、ナットのほうが強度が高くあるべきとされています。ゆえに、本来はナットは鉄であるべきなのです。

そんなこんなで、私はどこでも売っているごく普通の鉄ナットが良いと思います。ヘタに凝っていないアルミでもないナットが、強度とボルトの負荷のバランスが良く、トラブルも起きにくいと思います。