エンジン内部の主要部品であるピストンを交換するともなると、ハードチューンの部類に入ってきます。そのため、いったいどれほど変化があるのかと大きく期待してしまいますがその実態は果たして。
筆者のクルマの走行距離も12万キロに達し、いい加減にオーバーホール*1(以下OH)をしなければならないのではないかと思うようになりました。どうせエンジンを開けるならパワーアップを図りたい。という、どちらかというと気分で変えてしまった感があります。
エンジンは圧縮比を高くするにつれ出力も向上しますが、だんだん向上する出力の比率が低くなっていきます。圧縮比を1アップするとして、8を9にするのと11を12にするのでは、前者の方が向上する出力が大きいのです。セリカのエンジンは高出力タイプで圧縮比は純正で11.5と非常に高く設計されており、これを新たなピストンを組み込み12.3としました。先に述べたように、この領域では圧縮比アップによる出力向上はあまり望めません。
しかし多くのハイコンプピストンは、圧縮比だけでなく軽量化や摩擦抵抗の低減に力を入れて設計されています。これらの総合で効果が現れます。
とはいっても、結果から言ってしまえばガッカリでした。さすがに主運動部品だけあって明らかな違いがありサーキットでのタイムアップもしましたが、エンジンのOHに50万ほど掛かってしまったので、コストに対して見合っているとはいえません。また、12万キロ走ったにも関らずエンジンの状態は大変良く、OHの意味もあまりなかったようです。
これら強化ピストンは殆どが鍛造で出来ています。詳しい話は割愛しますが、鍛造ピストンはスラップ音*2というガラガラ音が出てしまいます。機械的な不具合はないのですが結構耳障りな音です。エンジンに対する熱の入り方に左右される音なので、エンジンが温まりきっていない間は特にひどいようです。
不具合はもうひとつあります。発進時にノッキングが出るのですが、それが少し大きくなりました。ごく低回転での軽いノッキングはほとんどの車種で発生するので極端にその状態を続けたりしなければ問題ありませんが、それが少しひどいとなると気になります。ただしこれは、後のECUセッティングにより解消されました。
もしこの手のパーツを付けるならば、エンジンが目に見えて不調になりどうしてもOHが必要となった場合に「ついでに」装着するぐらいでないと割に合いません。何かしらの理由があって、すぐにフルチューンにしなければならないのなら、コンプリートエンジン*3を購入したほうが良さそうです。手法を問わずパワーが欲しければターボやスーパーチャージャーを付けたほうが遥かにいい結果が得られます。
ただ、ロードスターなど圧縮比の低いレギュラー使用のクルマなどはまた違った結果を期待できるのではと思います。