KNUXX

Parts reviewsNoteForumBook Marks

パーツレビュー

Parts reviews

Tips

ATS カーボンクラッチ シングル

カーボン製の駆動系のパーツがいくつか出ていますが、どれもなんだか怪しい雰囲気です。実際はどうなんでしょう。

特性の変化

カーボンクラッチの特性としてよく言われるのが「純正クラッチと比べても遜色のない扱いやすさ」がありますが、そんなことはありません。 そのフィーリングは紛うことなき強化クラッチで、MT免許を持っているだけ、という人にはなかなか厳しいと思います。

また、必要な踏力も増えますので純正クラッチと比べたらやっぱり扱いにくいのは間違いありません。メタルフェージング*1程でありませんが、純正やスポーツタイプのものよりは扱いづらいことは間違いありません。

サーキットでは半クラッチは使わないのでかなり使いやすいと思います。ただし、強めのペダル踏力が必要なので0.01秒でも速くというときにシフトアップでかなり気合が必要です。純正と同等のクラッチならスパンと余裕を残したまま一瞬でシフトアップできるでしょう。

気になる不具合は

ありました……。まず音。シャラシャラうるさいです。知らない人から「壊れてるの?」なんてよく言われますが、正常です。あえて不具合として書きましたが、個人的にはこの音は大好きです。説明書にも音が出ますと書いてありますので、好みの問題ですね。

次にジャダー。つながるときにガガガと引っ掻くようなフィーリングでつながるのですが、これも正常です。同じく説明書にも記載がありました。これはあまり好きではありませんでしたが、慣れてくると「ジャダー=半クラッチ」という概念が出来てしまい、普通のクラッチにおいて半クラッチが分からないなんてことになりました。よく言えば分かりやすくなるのでこれはこれでいいのかもしれませんw

三つ目に、装着直後の切れ不良について。クラッチの切れが悪く、目一杯ペダルを踏んでもシフトがゴリッとなります。これはいくらか走っていると直りますが、気になるようなら初期のうちはペダルの調整機構がありますのでそれでペダルのストローク量を増やしましょう。ですが、クラッチのストロークがあまり長いのもどうかと思いますので、機を見て戻すことを忘れずに行う必要があります。これに関しては偶然ディーラーのチーフメカニックの方と話す機会があったのですが、強化クラッチではよくあるとのことなので不具合かどうかは微妙です。

最後に間違いなく立派な不具合がひとつありましたのでご紹介します。ただし、ZZTセリカ用に限った話ですので間違えないようにしてください。

このクラッチのカバー*2は、実は強度が不足していました。エンジンのOH時に発覚したのですが、もう少し使い続けていたら危なかったです。メーカーに問い合わせたところ、修理工賃はサービスするが全額負担は勘弁してくださいとのことでした。競技に使っているので保証はなくても当たり前なのですが、仮にも競技用のパーツを作っているメーカーならもう少し何かないのかな、とは思います。

メーカー曰く、サーキットを良く走るユーザーから同じクレームが続出しているとのことですが、そのすべては同じクラッチを積むロータスのエリーゼやエキシージユーザーからで、セリカユーザーからは初めてだそうで、ロータスに関しては対応済みとの事でした。無論、同じものがセリカにも装着できますので筆者のクルマにはロータス向けのものがついています。セリカ用も変更すべきだと思うのですが、在庫が全て無駄になってしまいますから、公にしたくない気持ちは分かります。サーキットユースでなければ問題はないわけですし。

その後の経過

装着後、カバーの故障を除けば随分と調子が良かったと思います。カバーの交換後も不具合は出ていません。カバーの交換を行ってからはジャダーも出なくなりましたし、シャラシャラ音もなくなりました(残念!)。メーカーの人も「音は無くなっちゃいますがいいですか?」なんて言っていたように、あの音は好きな人にはたまらないんですね。

巷でよく議論になる「カーボンクラッチは長命か短命か」という話ですが、使っている限り最低でも強化クラッチと同等であると思います。どっちの説もごもっともなのですが、国内クラッチ最大手のエクセディの方によると、カーボンは鉄との摺動では磨耗量が少ないがカーボン同士は磨耗量が多くなるそうで、カーボンクラッチが極端に短命だということはなさそうです。

どんな人が使うべきか

実はよくよく考えてみると、カーボンクラッチをわざわざ装着するメリットはあまりありません。 軽量でミッションへの負担も少ないため確かに高機能なのですが、価格は高くなります。

信頼性も疑問が残ります。筆者の場合は問題ありませんでしたが、他の車種やツインやトリプルでは全く違う結果になる可能性はあります。高機能であることと、もしオーバーホールサイクルが長いのならば、カーボンクラッチを選ぶ価値はあるのかもしれません。個人的にはスポーツタイプとして一般的に売られているタイプが無難であると思います。

Key Words

*1フェージング
クラッチの核となる摩材、ディスクとも。樹脂や繊維の複合材が一般的だが、モータースポーツ用に金属製やカーボン製がある。軽ければ軽いほど良い。
*2カバー
フェージングを鉄のプレートに押し付けているが、シングルクラッチの場合はカバーとプレートが一体型の場合がほとんどである。